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大手との取り組み

この頃の私は、あらゆる企業や新聞、雑誌宛にメールを送る事を日課にしていた。

内容は”ちぢみ生地を使って商品を作りませんか”
“京都の縫製会社が自社ブランドの旗艦店を出しました”

が主たる内容。
要はOEM提案や宣伝目的のメールだが、Tシャツを発売した頃に覚えた新聞社へのニュースリリースを糧に、本当にあらゆる所に送りつけた(笑) おかげで繊維関係の専門紙はすぐに掲載してくれたし、雑誌も何冊か掲載いただいた。

問題は企業に対して。
今でも続くこのメールは、今までに何通送ったか、誰に送ったかさえも覚えていられない中で、東京馬喰町にある企業さんから返信があった。普段付き合いのある肌着メーカーではない企業からのメール。

私は恥ずかしくも全く知らなかったが、父親に内容を伝えると「 お前それ〇〇さん言うて、卸の大企業やないか! 」と顔が綻ぶように言葉を返してきた。それでもまだ凄さを掴めていない私は、父親をいなすような返事をして、アポ取りをし上京した。

相手の会社周辺に着くと自身を恥じた。
あっちにもこっちにも、通りを挟んで同じ会社が並んでいるのである。

それに会社内に入ろうにも専用カードをかざさないと入れないシステムになっていて、一見さんお断りの”ヒトセキュリティ”しか存在しない京都で育った私は東京の大企業に面食らった。

この時の商談は順調に進み、父も気分上々に東京を後にしたのだが、私はその商談内容に疑問符を持っていた。

それは商品の価格だった。
10色展開で並べていた当時のTシャツは上代が2,000円(税別)。

この価格設定は、染色や生地などにかかる協力工場からのコストから反映された価格だった訳だが、エンドユーザー限定、知名度もあって毎日毎日ひっきりなしに目的買いをしてくれる話題の商品だったら問題はなかったのかもしれない。
しかしイチ地方の縫製会社が出したアパレル品。

業界の知人から「 無理やで〜上代は卸価格にも耐えれるようにちゃんと設定せな」とアドバイスを受けていて、それを社長に伝えても、一向に聞き入れてもらえなかった。
そんな中、大きな卸会社から声がかかったのだ。
こちらの希望卸価格と、向こうが買いたい価格に差が出るのは必然だ。

商慣習で話すと、小売店に卸すような大卸店は上代の約35〜45%ぐらいで商品を仕入れる。そのかわり量でカバーして、なん百なん千といった単位で発注を頂ける。

こういった商慣習をもとに今回の話を進めると、山城のTシャツは2,000円×40%である800円ほどで相手に買ってもらう商談なのだが、これを頑なに社長は断り続けた。商品に対する自信だったと思いたいが。
小売店に卸す60%以外は取引しないと言い張った。

私が弾き出すコストでは、父親が希望した60%だったとしても荒唐無稽な上代に設定されていたのは確かで、これ以降、中小零細によくある親子喧嘩が頻発するようになっていくのだった。

三代目のコラム 記憶を辿る100話に続く

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