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三代目 コラム ブログ 日記 投稿 記憶を辿る 56話

渡米の決意

睡眠時間やプライベートも削りながら掛け持ちで過ごす日々。
ある日、花の配達先で出会った人を起点にした” if “は、今考えても恐ろしい。

昼職の先輩達には”悪かった”人が多いという話は44話でも書いたが、過去の繋がりからこの会社には、近所に来たからなのか情報共有なのかで度々立ち寄られる”方々”が居た。この中の1人とお花を届けた先のラウンジで出会ったのだ。

「 おぅ、お前なにしてんねん。」

理由や経緯を説明して何とか取り繕えたが、問題はバイト先が知られた事だ。
昼職の先輩達に、掛け持ちを告げ口をされるというような不安ではない。

昼間は先輩達の後輩という事や、一般の会社への出入りという事もあって気にかかるほどでは無いのだが、常に眼光は鋭く、贔屓目に見ても一般人のそれとは違う一抹の怖さを覚えるような方だったからだ。

私自身も彼を呼び寄せてしまう”垢抜け”が出来ていなかったのだろう。
一度会うと配達途中や道端で度々会うようになり、下の人達や取り巻き連中も当初は怪訝そうな顔つきで私を見回していたのが、徐々に個別でも遭遇してしまうようになる。
素通りは出来ないから挨拶をすると世間話もされるようになる。
完全に負のスパイラルに入ったのが分かった。

出会ったある日以降、1〜2ヶ月した頃だろうか。
自身が経営されている夜の店に、定期的にお花の配達するよう下の人が頼みに来られた。店からすれば未来のお得意様であり断る理由はない。知り合いだという事で、優先的に私が配達を任された。

行くと必ず「 飲んでいけ 」に始まり、個人的な事を根掘り葉掘り聞かれた。
最初は他愛もない質問や世間話がだったのが、途中から話の合間に「 バイク乗ってた? 」「 足は速かった? 」「 道は詳しい? 」と何か違和感を感じる質問が入るようになっていった。

これに加え何故かチップと称した小遣いを渡そうとしたり、経営する店のホステスさんと飲みに行こうと誘われたり、携帯や家の場所を聞かれたり。それら全てに断りを入れていたが、私の感じた嫌な予感、違和感は的中した。

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ある日、日本をひっくり返すような事件が起きたのだ。
この出来事は私の勘ぐり上であり、また想像を脱しない話だから”No.2″というワードだけ出しておこう。

ただ時系列、執拗に聞かれた質問内容と立場、後日談を含めて考えると…
もちろんそういった類に使われる実行者の選定は、私のような人間を選ぶはずはない。後に出版された類の本を読んでも一般人は皆無だ。しかし何かで”使える駒”として数えられていたことは間違いない。

肝心の私は、たまたまこの前週にギックリ腰をしてしまい療養していた。
無理が祟ったのだろう、昼も夜も完全休業だった。

ただただ寝ることしか出来ない日々だったが、昼職に復帰すると会社の先輩から「〇〇から、お前が何してるねんて何回も聞いてきとったぞ。なんかお前したんか?」と矢継ぎ早に聞かれ、これが運命を分けたかも知れないと思うと、今でも怖くなる。
この事件以降、彼や関係者と遭遇する事はなく、店舗も知らぬ間に閉店していた。

その世界に住まう人達は、自ら志願するにも相当の理由がある。
そしてその世界でしか生きれない人達もいる。

その点に置いて私は両親共に健在で、これまで書いてきたように与えられた枡の水は零れ落ちるぐらいに満たされていたのだ。器さえもなく、貪欲に満たそうとする面々とは土俵が違うから、その世界ではただの”駒”に過ぎなかった。

42話にも書いた事で私は抗鬱剤を処方されており、それに頼ることなく立ち上がるには、それら一切を断絶し環境を強制的に変える必要があった。また並行するように貯蓄も一定額になっており、ラーメン店を開業するよりも先に、兼ねてからの憧れの地アメリカ行きを決定した出来事だった。

三代目のコラム 記憶を辿る57話に続く

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