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大人との交流

当時、目に入った世界が全ての世界を支配していた頃、ジャンル毎のDJが、日替わりでレコードを流すスタイルの “Fish&Chips” (以下:Fish)というアンダーグラウンドの雛形ともいうべきDJバーがあった。

ツンさん a.k.a MAD MAX

人はツンちゃんやツンさんと呼び、皆から慕われていた。
MAD MAXとはDJ名で、常に”MAX”とパッチワークされたオリジナルのベースボールキャップを被り、有名無名問わず、京都出身のバンドやアーティストは、彼と何かしらで繋がっているような人物で、この人に音楽の知識、持っているレコードの質を認められれば Fish でDJとして採用される仕組みになったバーだ。

15歳だった当時、20代の兄貴的存在。
今でこそ5歳差ぐらいは何のこっちゃぐらいだが、当時この差は大きい。
とてつもなく大きい存在に思えたし、知識と経験、人脈の全てが輝いて見えた。口を覆い隠すように吸うシガースタイルにも憧れた。

ツンさんを軸に、一癖も二癖もあるアクの強い大人の男女が集い、好きなアングラミュージックを聞きながら語り合う場所「Fish」。店の前には、金髪ハリネズミや豹柄コートを纏った客が屯し、TVでは聞かない音楽が爆音で溢れ出してくる。

アナキズムを体現したような店に常識人が近寄ることはなく、世間に馴染めず混沌とした人間達が、引き寄せ合う磁石のように集まる。この時に交じり合った人間は後年、総理大臣賞を取るアーティストになったり、各方面のトップとして影響力のある人間となっているのが実に面白い。

観光地である京都の違う側面、言わばB面ともいえるFishへと私を誘ったのは27話にあるRだ。
爪楊枝がまつ毛にのるような童顔で、ロックンロールが大好きだったRは、常にポマードで固めるキューピー人形のような髪型をしていた。彼と同じ高校に通う友人も同じようなファッションと髪型をするコンビだったから、街の話題にならないはずがない。

その余波はどんどん広がり、雑誌CUTiEに彼らのスナップが掲載されると、それをきっかけに地元情報誌K-ITE LAND(カイトランド)が目をつけたのだ。

この地元情報誌の編集長兼社長は、まだまだアングラ色が強かったClubやバーを経営する、街のちょっとした有名人。彼が撮った街角スナップはカイトランドに掲載され、彼も漏れなく掲載された。この縁で彼はFishを知り、私よりも先に通っていたのだった。

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