記憶を辿る 27話
– 新しい世界 –
時代的に全国ではヤンキー文化が跋扈(ばっこ)していたものの、新たな若者文化として渋谷センター街から生まれた渋カジに系譜を持つグランジファッションやチーマー文化、スケボーやダンスに代表されるストリート系との過渡期だったように思う。
後のegg系ギャルに繋がるボディコンに身を包んだ女子高生達がイベントサークル(以下:イベサー)を作り、直管バイクや改造セダンで迎えに来る暴走族に属するヤンキー、はたまたリフトアップした四駆に乗りながら、お揃いのスタジャンでナンパを繰り返すなど、時代の先端をいく若者の存在があった。それらが、夕暮れを迎え、暗くなり始めた河原町や木屋町に入り混じる。それはまさに文化が変わる潮目で起こるカオス状態だったのだ。
相変わらず無軌道状態が続いていた高校入学を迎える春休み。
当時流行り出した古着屋が基地周辺にもチラホラ出来始めた頃。
アレも欲しい!コレも手に入れたい!と欲張り、スケボーを軸にしたストリート系を目指していたのはずが、世間を賑わす古着にも興味が向き、そこで出会う年上や先輩、ショップ店員と徐々に顔馴染みになり可愛がってもらった。そんな中、新京極や基地界隈で常に出くわす、明らかに同じ中学生だと分かるヤツがいた。
その名前はイニシャルでR。
その後の交友関係を築くハブ役となった1人だ。
当時まだ聡明期だったバックポケットのカモメマーク部分をペンキでなぞったEVISジーンズを穿き、サスペンダーでハンチングを被ったオシャレな奴「R」。このEVISジーンズは当時でも3万円ぐらいして、欲しいのだがパー券仕事では追っ付かない代物。それを穿いた中学生である。
興味が生まれない訳がない。
目が合った合わないで彼に近づき、翌日40人ほどのスーパーヤンキーのお礼参りに遭った事で急激に仲良くなった。知らぬ間に会話が始まり、気づけば日々顔を合わすようになる。
この出会いが発端となり、幼稚に見えた同じ高校人脈だけではない、食み出し者との繋がりや大人が入り混じる音楽の世界に入っていくことになったのだ。
余談だが、後にその「R」はミリオンを稼ぎ出すラッパーを輩出するレーベル会社の社長となり、自身もステージに立つアーティストとして活動しながらも国内だけに留まらずストリートの世界では超有名人になっていった。