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心のバランス –

悪の雲上人と対面してからも通学は続いていた。
週1で通うかどうかのような状態だったから暇を持て余す毎日。

既に卒業していた同年代は、仕事を見つけたり進学したり。
上京組もいれば、一角の人間に弟子入りする者、京都から逃げるように吹き飛んだヤツなど様々だった。

私自身やりたい事があった訳ではなかったが、世間の広さを見せつけられていくうちに”今のままではいけない”という思いが生まれだす。
そんな気持ちを競り合うかのように、現状の甘えが生み出す、延長線上にある未来との模索は続いていた。しかし40話にあるような大物と対峙させられる狂乱高校で見た様々な人種は、その後の人生に大いに役立ったと思う。

悪ヒエラルキーの中での自分は超小物だという事を思い知り、闇金ウシジマくんに出てくるようなモデルとも相反する生い立ちに感謝できるようにもなっていた。人から見れば、下り一方通行のように見える私の人生は、刻々と次のステップへ進めるべき足音が響いていた。

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この頃から、周りの人間が思い描いているであろう自分と、その期待に応えようとする自分、自分自身が知る本当の自分との乖離に悩まされることが多くなる。私が聞いた自身の突出した悪評はこうだ。

頭にナイフが刺さりながら歩いていたらしい。
警官から拳銃を奪い、そのまま歩行者を撃ったらしい。
私の一声で何百人はすぐに駆けつけてくるらしい。

噂とは尾鰭が付き物だが、こうも現実離れする噂があるだろうか。
聞いた時には大笑いし否定しているのだが、突拍子もないような噂が駆け巡っていることが嬉しくなっている自分も居る。こうなると厄介で、噂に沿った言動や期待以上の行動をしたくなってくる。

誰も求めていない要求を勝手に想像して汲み取り、想像されている自分以上でいなければいけないのではないか。自分で自分を強迫し、更に追い込んでいく負の連鎖。世間を賑わした何とか連合のメンバー達は、悪のヒエラルキーレースから降りることは許されなかったはずである。意地と面子が作り出す心との乖離、負の連鎖とは正に言い得ていると思う。

幸い私の場合は、己の立ち位置を知りゲームを降りる選択ができた。
離脱した経緯は次話で書こうと思うが、己の立ち位置を知った以上、いくら粋がり虚勢を張っても虚しさが残り、一体自分は誰のために、何のために行動しているのかが分からなくなった。

徐々にメッキと心のバランスが崩れていく。
その糸は、ある夜プッツリと音もなく切れた。

三代目のコラム 記憶を辿る 42話 に続く

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