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三条 四条 木屋町 河原町 昭和 古き良き 時代

映画の世界

Rがラッパーとして踏み出す前、ロックンロールを卒業した彼はジャズを好んで聞いていた。
映画”さらば青春の光”のようにレストアした125ccランブレッタを乗り回し、ファッションはモッズスタイル。これに呼応するかのように同年代が集まり、イギリススクーター軍団のような1軍が形成されていた。

一方でアメリカ文化を取り入れたチーマーや渋カジスタイルから派生した、映画ロッカーズのようにSR400やバイカースタイルのスティード等を乗り回す高校生軍団、八千代公園や京劇前でスケボーなどをしながらハングアウトする我々。
目まぐるしく変わるファッションスタイルと音楽や人。
この頃の同年代は情報に飢え、貪るようにどんな情報でも取りこぼさないよう取り入れ、昭和時代の不良は暴走族から本職という図式が、それらに憧れを抱けない物達が集まっていた。

強くておしゃれという不良の定義が細分化してきた時期、いつからか東京の高校生を中心に構成された egg や、ストリートニュースといった雑誌に情報源は変わるが、この時はまだ海外の映画から取り入れることが多かった。

時計仕掛けのオレンジ、ウォリアーズ、ジュースやポケットいっぱいの涙などのアンタッチャブルな映画を好んで見てはファッション、音楽、ライフスタイルを真似る。それらに触発された一癖も二癖もある人間が入り混じり、育った環境や境遇、価値観の違いで起こる衝突や摩擦、矛先を定められないストレスの発奮先を求めていく。

土曜日の夜ともなれば、三条大橋袂にあった旅館前(現スターバックス)や鴨川の遊歩道に降りていく所にある民民前、木屋町三条から1本南の小橋、京劇ボーリング前などは、それぞれの出自(高校や地元)を元にした派閥を作り、男女が入り混じる感じで混沌としていた。派閥毎の縄張りとのような趣で、それぞれの領域は侵さない暗黙の境界線が引かれていた。

私が初めて夜の華やかな世界を体験したディスコ(25話)は既にに京劇ボールのゲームセンター パロに変わっていたが、この前の道は各地方の繁華街内に一つはある別名の呼び名”親富孝通り”と未だ呼ばれていているような時代だった。

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そんなある日、DJ機材に繋ぐエフェクターのような物をRが私の家に持ち込んだことがある。彼も暗中模索、自分の居場所のようなものを探していたようだった。
私の記憶と彼の動きが一致しているならば、彼のサクセスはこのエフェクターから始まったはずだ。

レゲエのDJ(MC)がパトワ語でパフォーマンスするイメージで、ディレイやリバーブ機能(こだまのような反響音)を使って一頻り盛り上がった我々は、自分達でイベントを打とうとなった。ブラックミュージックに精通したOという人間も加わり、エフェクターを使ったMCありきの高校生パーティをオーガナイズするという話だった。

その頃の私は Fish を卒業した事もあって、聞く音楽はジャンルレス。
35話にあるプライマルスクリームのThe Rocksを中心に、レゲエやヒップホップも取り入れるメジャーチューンを流すパーティDJに変貌を遂げている最中である。

後輩がオーガナイズする高校生パーティからもDJとしてお呼ばれする事もしばしばあり、ファッションも鼻ピと耳をチェーンで繋ぐハードビジュアル修行僧スタイルから、18金喜平ネックレスにオールバックという渋谷スタイルに変わっていた。
これまでのハゲは、異様に女性を意識し始めていた。

そんな中、オーガナイズするイベントにDJが足りない。
しかし毎週末のようにクラブでは高校生パーティが開催され、その中には各パーティにDJとして呼ばれては女子高生達が群がり、黄色い声援を贈り、出待ちありきなスーパー高校生がいるというのである。

百聞は一見にしかずなのだが、既にご存知の通り我々一行は粋がった御一行である。
興味があるから会いに来たという弱みは見せられない。
無意識に面子を重んじていたのだろう。DJを誘うという話は、その粋がっているらしいスーパー高校生をシバきに行くという話に変わってしまっていた。

要はただのモテている人間への嫉妬。
たったこれだけの話が道筋は湾曲し修正不能。
狙われた彼にしてもそうだ。モテようとした努力も少しはあっただろうが、登下校やDJを頼まれたパーティで女子高生が勝手に騒いでいるだけなのだ。芸能界に身を置く人達と同じように、良い迷惑な話である(笑)

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パーティへ先鋒隊として送った人間から、スーパー高校生が現れたと連絡が入る。
顔見知りだったコラージュというクラブの店員やバーテンとの挨拶もそこそこに、店内は蒸せ返るような熱気に包まれ、噂通り圧倒的に女子高生率が高い。かき分けるようにして奥にあるDJブースへと向かうと彼はいた。

ゴルチェのような真っ黒の衣装に白髪。
DJブースを女子高生が取り囲み、次々に選曲する彼を食い入るように見つめている。
確かハウスかテクノを流していたように思うが、こんなにも世の女子高生を虜にする同年代が存在したことに驚いた。猿の惑星のようなむさ苦しい男の世界とは、まるで別世界に彼はいたからだ。
嫉妬や憧れ、緊迫した空気。

我々が来るという情報が、どこからか漏れていたのだろうか。
DJブースから出てきた彼は、拍子抜けするくらいに腰が低く、周りに群がる女子高生もいる中、どうしても我々が得意としてきた暴力的な解決方法が取れなかった。相手が一枚上手だったのか。
これを機会に白髪の彼が仲間に加わった。

今ほど男性用の整髪料や美容具が少なく、金髪にするならオキシドールを使うような時代だった当時、後に白髪にする整髪料は何を使っていたのか? と聞いたことがある。その問いに彼は”ハミガキ粉”を使っていたと答えた。まるでアイドルのようなスーパー高校生でも、更なる高み、人との差分を付けるための努力を重ねていたことが判明した。

よくオリンピック選手や一角の人間が「 私には99%の努力と1%の運です」と答える人がいるが、正にその通りである。最初は1歩の差だった足並みは、やがて10歩の差となり、届かないくらいになっていく。
美形の容姿を授かった男との差分を思い知ったエピソードだった。

記憶を辿る 37話へ続く

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